http://www.yomiuri.co.jp/national/20180405-OYT1T50040.html
秋田県で、車両が約40度の法面を乗り越え、高架の40m下に車両ごと落下して3人が死亡した。
この事故では通常では上れないはずの40度の勾配を上ったことが端緒である。
下掲の画像は、事故現場のものであるが、道路縁石に一旦乗り上げ、その後に斜面を登っていることになる。
何故、上れたのかについては、ショックアブソーバーの減衰が期待出来なかったことだ。
そもそも、ショックアブソーバー(ダンパー)は、スプリングの動きを抑制する働きを担っている。
つまり、スプリングだけだと激しく車体が上下するのであるが、ショックアブソーバー(ダンパー)がこれを抑えている構造だ。
自動車の乗り心地を改善する機構だが、瞬間的な衝撃に対してはこれが裏目に出る。
ショックアブソーバーは、緩やかな力に対しては、緩やかに戻ろうとする性質がある。
しかし、瞬間的な力に対しては減衰させることなく、そのまま、力を車体に伝えてしまう。
結果的に、乗り上げた力は車体を突き上げてしまうのだ。
そのため、縁石にある程度の角度で乗り上げるとそのまま車体は浮揚してしまう。
下掲の画像は60km/hで段差を乗り越えたものだが、あっけなく車体が浮揚することが判る。
前掲画像は、NHKが1981年に放送した、科学ドキュメント「車がジャンプした! 分離帯激突事故の謎」 という番組から切り取ったものである。
では、縁石に乗り上げた自動車が2m近く浮揚した様子が放送された。
この現象が明らかになったのは比較的最近の1970年代のことである。
中央分離帯に衝突した車がジャンプして反対車線に飛び込む事故が多発したからだ。
高速道路に用いられる縁石の構造を垂直に切り立った構造から傾斜の付いたマウンタブル構造になったのはこのためだ。
しかし、マウンタブル構造でも安心できない。
現に今回の事故はマウンタブル構造の縁石で起きた。
この構造でも侵入する方向によっては、車はあっけなくジャンプする。
下掲のGIFは、約50km/hの速度でマウンタブル構造の縁石に乗り上げたものだ。
くるまがあっけなくジャンプすることがわかる。
今回の事故で、法面に乗り上げたのは、さほど大きなスピード超過があったとは考えにくい。
せいぜい、約10km/h超過していた80km/h程度ではないかと推測している。
高速道路で一旦コントロールを失えば、為す術はほんの僅かだ。
せいぜい、車が停止するまで、このまま無事に済んでくれと、祈ることしかできない。
今回の事故は誰にでも起こりえる事故だ。
他人事と楽観しないことが重要である。
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