交通事故鑑定人になるには その2

私が鑑定人を志したのは二十代後半であった。

しかし鑑定人として生計を維持できるようになったのは、四十になろうかという頃である。

それまでは、土木設計との兼業鑑定人であった。

徐々に、土木設計よりも交通事故鑑定の割合が増えていったという感がある。

今思えば、そこまで時間を掛けなくても鑑定人になれたと思う。

自立するまでは完全な徒手空拳で、自立まではかなり回り道をしてしまった。

しかし、回り道の経験こそが、交通事故鑑定人としての私を支えている。

脇道に逸れたり、幾つもの失敗がなければ、鑑定人として淘汰されていたであろう。

ところで、交通事故鑑定人として認知されている者の内、専業鑑定人は驚くほど少ない。

年金収入・大学教授・メーカー勤務・プログラマー、鑑定業務以外で所得を得ている。

私自身も厳密な意味で専業鑑定人ではない。

テレビ番組の企画・脚本監修・ニュース解説・出演などで報酬を得ているからだ。

勿論、やろうと思えば専業鑑定人で生計は維持できる。

しかし、私の現状が兼業であることは紛れもない事実である。

初学者が交通事故鑑定人を志した場合、何らかの兼業を持つことを勧める。

というか、兼業者でなければ鑑定人としての自立は難しいだろう。

鑑定業務は多額の金銭が絡むため、どうしてもベテランに仕事が偏重しがちだ。

成果が不透明な新人に生計を維持できるほど仕事は回ってこない。

よほどの資産でもない限り、新人が鑑定人を始めても生計の維持は難しいだろう。

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